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国際アーバンスポーツが都市を動かす―FIBA 3x3 World Tourを起点に見えた「開催都市の知見」を世界へ―【後編】

2026.11.05

JSPINでは日本発祥の3人制バスケットボールのプロリーグである3x3.EXE PREMIERの世界的な広がりについてJSPIN HPにてコラムを掲載した。本コラムではFIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Opener 2026を開催した宇都宮市やステークホルダーとなる企業、ラグビーワールドカップでの代表チームキャンプ受入経験のある北九州市などを交えたフォーラムから、スポーツの国際大会の開催を様々なステークホルダーとの共創による都市の成長につなげるためのポイントを探る。

【前編】に続き、【後編】ではFIBA3x3統括責任者であるアレックス・サンチェス氏の考える国際大会開催都市の提供価値や足利銀行やゼビオホールディングスといった企業の国際大会開催への関与の仕方について紹介します。

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3x3.EXE PREMIER:7チームから99チームへ。日本発祥の3人制バスケのプロリーグが見せる世界的な広がり【後編】

FIBAが示した「開催都市に価値を返す」競技設計

FIBA 3x3統括責任者 アレックス・サンチェス氏の登壇

FIBAのアレックス・サンチェス氏は宇都宮市を実際に見て回ったうえで、「3x3を開催する場として非常に素晴らしい環境」と評価した。国際大会は競技の質だけでなく、開催都市が提供できる“体験全体”で価値が決まる。そうした観点から見ても、宇都宮市はhost city readiness(開催都市としての成熟度)を備えているというメッセージとして受け止められる。

また、サンチェス氏は、3x3を発展させるうえで常に“ステークホルダー全体”を起点に競技を設計していると強調した。観客にとって楽しく分かりやすいか、また来たいと思えるか。開催都市にどんなメリットがあるか。経済・社会的効果をどう生むか。スポンサーにどう価値を返すか。さらには、選手が3x3でキャリアを築ける環境をどう整えるか――こうした多層の論点を同時に満たすことが国際大会としての成長条件であるという。

また、3x3を「世界でもっともエキサイティングなアーバンスポーツ」にしたいという軸が、ルールや演出だけでなく、会場、スポンサー価値、都市との関係性まで貫かれている点も重要だ。宇都宮市との関係を「特別」と表現し、10年にわたる継続開催の中で都市と競技がともに成長してきたことを評価したうえで、街なかに会場を置くこと、地域の象徴的な景観や文化と結びつけること、ファンやスポンサーに分かりやすい価値を提供すること――そうした要素を宇都宮市が実現してきたと述べた。これは、FIBAが重視する開催都市の要件を、具体例で示した発言でもある。

スポーツ投資は「広告」から「地域への戦略投資」へ

足利銀行取締役 竹内雄一氏の登壇

企業パートでは、スポーツが「協賛」から「共創パートナーシップ」へと変化している実態が、より具体的に語られた。足利銀行の竹内雄一氏は、1895年創業の地域金融機関として、栃木SC(サッカー)、宇都宮ブレックス(バスケットボール)、ホンダヒート(ラグビー)など地域のスポーツと関わってきた文脈の延長に、3x3への参画があると紹介し、企業が“大会の外側”からスポーツを支えるのではなく、長期で関係性を育て、地域の資産として積み上げてきた点は、開催都市の成熟度を支える重要な要素である。

そのうえで竹内氏は、従来の看板やロゴ掲出など露出中心の協賛から、スポーツを通じて「銀行単独では出会えない人・企業・地域との接点」が生まれ、その先に新しいビジネスや共創が立ち上がると述べ、スポーツへの関与を「地域への戦略的投資」と位置づけた。これは企業にとってのvalue return(価値の還元)を、広告換算ではなく“関係資本の創出”として捉え直す視点でもある。

クロススポーツマーケティング株式会社(ゼビオホールディングス) 代表取締役社長兼執行役員 中村考昭氏の登壇

ゼビオホールディングスの中村考昭氏からも、足利銀行と同様に“パートナーとしての関わり方”が語られた。中村氏は、スポーツ用品小売に加え、イベント・大会・チーム・施設にも関わる立場として、宇都宮市とは3x3の取組が始まった当初から一緒に取り組んできたと述べた。ここで示されたのは、企業がスポーツを「支援する対象」として捉えるだけでなく、スポーツを核に地域と企業が一緒に成長するプラットフォームをつくる、という立ち位置である。

中村氏は、かつてスポーツ投資が広告宣伝費として理解されがちだった一方、現在は企業が持続的に成長するための基盤やプラットフォームをスポーツと共につくるものへ変化していると語る。スポーツは世代や性別、地域を超えて人を巻き込みやすく、説明不要で伝わる力があるからこそ、共創の場になり得る。そして国際大会では、都市や企業の魅力を短期間で一気に発信できるため、国際大会を受け入れる都市のステークホルダーの関係が短期間で縮まる―この指摘は、海外のオーガナイザーやスポンサーが重視する都市の受け入れ基盤を含むhost city readiness(開催都市としての成熟度)にもつながる論点だ。

また両者に共通していたのは、共創を成立させる“作法”が語られた点である。竹内氏は「最初から大きな絵を描く必要はない。小さくても一歩踏み出し、一度始めたら継続することが大切」と述べ、中村氏も「企業にとっては身近なところ、拠点のある地域など近いところから始めると理解を得やすい」と語った。さらに竹内氏は、複数企業が関わることで資金だけでなく機能や資源も持ち寄られ、一社ではできないことが実現できると述べ、中村氏もスポーツの場では“一対一”ではなく“多対多”の関係が生まれ、掛け合わせが増えることで地域に波及していくと指摘した。企業がパートナーとして入ることで、国際大会は「競技の開催」から「地域の共創装置」へと進化していく。


おわりに:スポーツの役割を定義し、ビジョンを共通言語にする

国際スポーツイベントは、競技の枠を超え、都市の未来づくりを加速させるプラットフォームになり得る。今回共有された知見は、日本の都市と企業が“世界と対話するための言語”として磨き上げられる可能性を示した。スポーツコミュニケーションデザインの視点で重要なのは、スポーツの役割を「何のために、誰と、どんな未来を実現するのか」というビジョンとして定義し、行政・企業・市民・国際競技団体が同じ方向を向ける共通言語へと翻訳することである。そのプロセスを通じて、各ステークホルダーへのvalue return(価値の還元)を具体化し、開催都市の成熟度を可視化できるようになる。こうした“意味付けと言語化”を起点に、投資と参画が循環するストーリーとして発信していきたい。

◇ Splat Inc.

Splat Inc.について
Splat Inc.
Splat Inc.は2023年3月に設立されたコミュニケーションデザインカンパニーであり、外資系戦略コミュニケーション企業で培った豊富な経験をもとに、スポーツが持つ本質的な価値を社会に広く伝え、企業活動や日本の成長へとつなげることを使命としています。競技の枠を超えたスポーツの可能性を可視化し、スポーツと企業、そして社会を結ぶ戦略的コミュニケーションをデザイン・実行することで、差別化された強固なブランド構築を支援しています

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