FC東京は、2026年2月5日に「サステナビリティ戦略」を発表。クラブが掲げるソーシャルステートメント「わたしたちのくらしの未来につながるゴールを」の実現に向けて、環境への取組をクラブ経営の重要なテーマとして推進しています。本コラムでは、FC東京が培ってきた「ファンとの対話インフラ」である「ジェネレーター会議」の企画・戦略をサポートされたSplat Inc.の横井氏にその取組や意義を紹介いただきます。

「国際展開」と聞くと、多くの場合「海外で売る」、「海外で稼ぐ」を思い浮かべる。しかしスポーツ産業の国際競争力は、売上だけで決まらない。いま世界では、気候変動への対応や地域課題への貢献がクラブやリーグの「評価軸」として示され、比較可能な形で提示される流れが加速している。Jリーグが参画するSport Positive Leagues(SPL)はその象徴だ。クラブの気候アクションを「ファン・サポーターの環境意識等への行動変化」など12項目(で可視化し、リーグ横断で示す枠組みである。
この潮流の中で、FC東京は、クラブ×企業×地域×ファンの共創を通じたサステナビリティを世界に説明可能な形で実装するべく取り組んでいる。本稿では、「スポーツ産業の国際展開」という視点で、なぜ「クラブのサステナビリティ」が成長のテーマになるのか、FC東京の挑戦が持つユニークさを明確にし、日本のスポーツが世界に通用する価値をつくり、語り、評価されるためのヒントを見出したい。
なぜ今、クラブのサステナビリティが「国際展開」なのか

気候変動は、スポーツそのものを脅かしている。猛暑や極端な気象による試合運営リスクは現場の課題であると同時に、国際的には「リーグ全体としてどう向き合うか」が問われる領域になった。スポーツ界には、国連が主導する「スポーツを通じた気候行動枠組み」があり、FIFAなど競技統括団体も気候戦略の整備を進めている。つまり、クラブの環境対応は「善意の活動」ではなく、国際ルールの土俵で「測られ、説明される」競争力になりつつある。
JリーグのSPL参画は、この流れに日本が本格的に接続したことを意味する。これからは、取組の有無だけでなく、どのように設計し、どんな変化を生み、継続的に改善しているかが評価される。その評価に耐える実装力を持つクラブは、国際的な信頼や投資家からの評価の観点でも存在感を増していく。ここに、国際展開の新しい入口がある。
FC東京「No Planet, No Tokyo」が示す「実装の厚み」
FC東京は社会・地域課題解決の啓発を目的として「No Planet, No Tokyo(NPNT)」を旗印に、サステナブルなクラブ活動を「社会実装」として積み上げてきた。今回の「ジェネレーター会議」では、組織横断的な連携(サステナビリティ推進体制の強化)や、持続的な社会の実現への貢献に向けたソーシャルステートメントの3本柱に紐づく施策設計が共有され、2月の「サステナビリティ戦略」の公開、それに伴う具体的な方針の策定、役割分担の明確化というロードマップが示された。特徴は、SPLを「チェックリスト消化」にせず、FC東京らしさと創造性でファン・地域を巻き込む実践を重視している点にある。
気候アクションは、情報が浸透しても「自分ごと化」しにくく、行動に移すまでのハードルが高い。だからこそ、単発の啓発ではなく、参加導線、ネーミング、現場体験、継続発信を含む「コミュニケーション設計」が勝負になる。FC東京は、環境授業の継続展開や、大学生インストラクター育成によるスタジアム運用の試行など、行動変容を起こすための実装を具体化している。
【前編】はここまで!
【後編】では、「ジェネレーター会議」の具体的な中身について迫ります。ファン・サポーターとの対話をどのように行動につなげているのか。また、その社会的価値をどのように可視化し、国際展開へと繋げていくのかを考察します。次週をお楽しみに!
◇ Splat Inc.
Splat Inc.について
Splat Inc.は2023年3月に設立されたコミュニケーションデザインカンパニーであり、外資系戦略コミュニケーション企業で培った豊富な経験をもとに、スポーツが持つ本質的な価値を社会に広く伝え、企業活動や日本の成長へとつなげることを使命としています。競技の枠を超えたスポーツの可能性を可視化し、スポーツと企業、そして社会を結ぶ戦略的コミュニケーションをデザイン・実行することで、差別化された強固なブランド構築を支援しています
