
AIを活用した次世代ワークプラットフォームを世界に展開するZoom Communications, Inc.は、2026年に創立15周年を迎えた。その日本法人であるZVC JAPAN株式会社は、Zoom会議だけに留まらない、従来のコミュニケーションにAIを掛け合わせた、新しい時代の仕事体験を創出すべく、日本市場でのサービス展開を加速させている。
同社は、2026年3月11日に東京都江東区の青海に2025-26シーズンにオープンしたTOYOTA ARENA TOKYOを本拠地とするBリーグのアルバルク東京のゲームデーパートナー(冠協賛企業)となった。Zoomがスポーツ興行の冠スポンサーを務めるのは珍しい。ZVC JAPANとして初のプロスポーツクラブとの取組を行った代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏にテクノロジー活用による新たな価値創出と展開可能性について話を聞いた。
アルバルク東京と実現させる「人と人をつなぐ力」
「人が楽しいとか、嬉しいと感じる瞬間、美味しいものを一緒に味わう体験を共有することで、後になって、「あの時の経験は本当にすごかったよね」と語り合える記憶が生まれます。それと同じくらい、あの試合の逆転劇は、心に深く刻まれる時間だったと感じています。」(下垣氏)
その試合は、ホームチームのアルバルク東京が14点ビハインドで最終クォーターに突入する劣勢な展開だったが、最後の10分間で相手より20得点上回る大逆転勝利を収めた。
試合前には、最新設備を備えたアリーナのコート上に下垣氏が登場し、“つながりが生まれる未来”について語り、試合中には天井から吊るされた巨大ビジョンにてZoomのAIアバターが登場し、リアルタイムで翻訳が行われた。テクノロジーがスポーツの楽しみ方をより豊かにすることや、多様な立場の方が同時にスポーツ観戦を楽しむことができるといったテクノロジーとスポーツの掛け合わせによる効果を伝えることができた。

「日頃のお客様への感謝を込めたステークホルダーとの関係構築、ブランドの体験価値を一度に届ける場として最適だった」と下垣氏は実際に体験を共有する場の重要性を口にする。
「試合当日のホスピタリティエリアや特別観客席に我々のお客様を55名お呼びして、普段ビジネスの会話しか行えていなかった企業の役員の方との距離を縮め「ちょっと会話させていただけないですか。」と言える関係をあの数時間で構築できた価値は、営業職の方であれば分かると思います。何よりもお客様にとって一生思い出に残る経験をお渡しするってなかなかできないことなので、それを大勢の方に一度にできたのは良かったです。それで結果的にバスケットボールのファンができれば嬉しいですね。」
本パートナーシップはBリーグの島田コミッショナーと下垣氏の偶然の出会いによって生まれた。コミッショナーと過去の経験を共有し、お互いの理解が進んだことで、ZoomとBリーグでBリーグの試合を通して何かを一緒にしてみようとなった。それから、関係者を通じてアルバルク東京と連携の機会ができ、今回の取組に至った。島田コミッショナーと下垣氏の偶然の出会いから4か月で実現することができたのである。
さらに、ゲームデーパートナーを担った試合の1ヶ月後の4月14日に年次カンファレンス「Zoom Experience Day」を都内で開催した。オープニングキーノート「BORDERLESS.境界を、なくす。AI時代のコミュニケーションが支える、新たな社会インフラの進化」で下垣氏と共に登壇したのは、トヨタアルバルク東京株式会社の代表取締役社長である林邦彦氏だった。
「アルバルク東京は、インバウンドの来場者を取り込み、「アジア・世界に進出するグローバルクラブ」となることを目標に掲げています。リアルタイム翻訳により世界各国の人々が同時に試合観戦を楽しむことができるといったZoomのAIテクノロジーを使った新しい観戦体験の提供は、目標達成に向けて非常に重要なチャレンジとなります。」(林氏)。
東京の臨海副都心に位置するアリーナには海外からの来場者も多く、母国語での理解を可能にするサービスを提供することは、グローバルなクラブを目指す上で必要不可欠である。誰も取り残さずに、来場者すべてが一生心に残るストーリーを描く理想をZoomのAIテクノロジーが現実にすると思い、今回の企画に参加した。
Zoomが私たちの生活にもたらしてくれたもの
Zoomが生まれたことで私たちの生活にもたらしてくれたものはなにか。下垣氏は、自身の考える3つの記憶の種類を基にこう語った。

「まずはモノや人の名前を連想させる意味記憶。例えば、選手の名前や何月何日の出来事など忘れやすいものがある。2つ目は匂い記憶。小学校の運動会の砂埃の匂い。大学時代の友人の押し入れのカビ臭い匂い。スタジアムの匂いや感じが脳幹に残り、忘れないものとなる。
3つ目の記憶の種類は、体験・エピソード記憶。自転車や水泳など一度できるようになったものは、少し年月が経った後でも再びできる。これらは、運動に基づく体験記憶である。下手にはなるかもしれないが、体が忘れることはない。それと同じものが人間の付き合いの中にもあり、様々なエピソード記憶が私たちには残っていく。」(下垣氏)。
「自分の今までのビジネスの経験の中で人との体験・エピソード記憶に凄く助けられてきました。正直なところ、ほとんどの商売はそれで決まってきました。それは今も昔も全く変わらないです。社会に触れていく中で1つの会社のトップをすることによって人と人のつながりにコミットして、エピソード記憶を持って人と付き合いたいと思っています。」(下垣氏)。
会社の大小関係なく、月に200人以上と会う下垣氏。
「どんな小さい会社でも、大きい会社でも、全ての人と繋がることがあらゆる可能性があると思っています。あらゆる可能性のある方とお付き合いし、エンゲージしてエピソード記憶を作ることを大事にしています。」
メールやチャットなどのコミュニケーションツールが発達する中で、対面以外のテキストベースのコミュニケーションが多くなってきている。また、2020年に新型コロナウィルスのパンデミックが起こり、対面で会うことが難しくなった。そうした中で、Zoomのようなサービスによって遠隔でありながらも顔を見て話すことが日常的にできるようになってきたのだ。
過去の体験から重要視するスポーツに対する継続性とコミットメント
国や言語を超えて人々をつなぐ力を持つスポーツは、Zoomのブランドバリューと非常に親和性が高い。Zoomは「人と人をつなぐ」をミッションとして掲げているが、スポーツとZoom双方にとって欠かせないのは継続性である。
下垣氏が社会人として最初に勤務した日本アイ・ビー・エム株式会社。1976年に同社のラグビー部が設立され、2004年にはトップリーグに昇格したが、その後は昇降格を繰り返し、2019年にはチームを譲渡する結末となった。
スポーツ界では好成績を残すといった「結果」が重要視される。一方で、日本におけるスポーツは地域密着型、社会貢献型の価値観も強い。その最たる例が企業スポーツにあり、応援していたチームがなくなるかもしれないという、自分が感じた歯痒い想いを選手やファンたちにさせたくないという強い想いを下垣氏は抱えている。そのためには海外とは違う日本流のスポーツとの関わり方を追求していく必要があると下垣氏は考える。
「私のポリシーとしてはできる限り、やり始めたら辞めたくない。お客さんに対して思い出を作るだけでなく、業界に対して何かしらのエンゲージメントを作っていきたいです。私たちはキャンペーンマーケティングで業界を盛り上げ、お客様に初めての感動を与え、エピソード記憶を作っていけたらいいなと思っています」(下垣氏)
継続していくためには、不断の取組が求められる。
「私の中で企業がスポーツに接するということは業界、選手、観客に対するコミットメントなのです。コミットメントの上にROI(投資利益率)があると思っています。」(下垣氏)
求めるものは数字では計れないエピソード記憶の醸成

投資が回収できたのか。事業を行っていく上ではKPI(重要業績評価指標)は必ず求められる指標となる。だが下垣氏がスポーツと協業する上で、求めるものはそんな短期的な数字ではない。それはアルバルク東京との取組でも同様だった。
「効果はあまり狙っていませんでした。試合前の段階では収容人数の半分の5千人が着席していたと予想します。そのうちの半分がZoomという存在に関心を持っていただき、その5分の1の500人がZoomのサービスを知ってくれて、頭に残ってくれたのであれば嬉しいですね。」
下垣氏はコート上に登場した4分間で来場者にZoomのサービスを知ってもらうのではなく、調子の良い社長だったなとか、いろんな機能があるのだなと記憶してもらうことを望んでいた。どれだけ記憶に残せるか。それは一緒に観戦した顧客たちに対しても同様の思いで、共にエピソード記憶を作ることを求めていた。
「私たちにとっては国民の大多数がユーザーであり、バスケットボールファンの前にZoomにとってのお客さんであります。どんなお客さんにも何かしら新しいエンゲージができて、Zoomの価値を理解いただければと思っています。Zoomのコンセプトは人と人を繋ぐということでスポーツを通じた支援を変わらぬビジョンとして持って行きたいですね」(下垣氏)。

◇JSPIN事務局
JSPIN事務局のメンバーが、日本のスポーツ産業のさらなる国際展開を支援する活動等をご紹介します。
