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国際アーバンスポーツが都市を動かす―FIBA 3x3 World Tourを起点に見えた「開催都市の知見」を世界へ―【前編】

2026.10.29

JSPINでは日本発祥の3人制バスケットボールのプロリーグである3x3.EXE PREMIERの世界的な広がりについてJSPIN HPにてコラムを掲載した。本コラムではFIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Opener 2026を開催した宇都宮市やステークホルダーとなる企業、ラグビーワールドカップでの代表チームキャンプ受入経験のある北九州市などを交えたフォーラムから、スポーツの国際大会の開催を様々なステークホルダーとの共創による都市の成長につなげるためのポイントを探る。

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FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Opener 2026(国際バスケットボール連盟〈FIBA〉が主催する3人制バスケットボールのワールドツアー開幕戦)の開催に合わせ、JR宇都宮駅に隣接するMICE施設(Meeting, Incentive travel, Convention, Exhibition/Eventの頭文字からなる会議や研修旅行、イベント等を実施可能な施設のこと)「ライトキューブ宇都宮」で「The Sports and Smart Cities Forum 2026」が開催された。自治体、地銀、開催パートナー企業、大学、スタートアップなど多様な立場から約70名が参加し、国際スポーツイベントが都市にもたらす価値と、その価値を“都市の成長”へつなげる共創の設計について実践知が共有された。

当日は、宇都宮市長の佐藤栄一氏がホストとして挨拶し、宇都宮市が積み重ねてきた歩みを起点に議論が立ち上がった。その後、宇都宮市と北九州市が同じテーブルで対話する流れで、アーバンスポーツを軸にした都市戦略の要点が立体的に浮かび上がった。本フォーラムの企画・戦略をサポートした筆者(Splat Inc.)は全体モデレーターとして、各立場の発言を整理し、示唆を意味付けして“共有可能な論点”へと言語化することを意識しながら進行を担った。

本フォーラムの価値は、特定都市の成功を称える場にとどまらず、国際競技団体・開催都市・企業・市民という各ステークホルダーに価値を返すための「Host City Playbook」(開催都市の手引き)として整理し得る点にある。日本の知見をグローバルに訴求していくJSPINの観点からも、国内の実装知を“世界と対話できる言葉”に翻訳する機会となった。

「競技の成功」ではなく「都市の意志」としてのスポーツ

宇都宮市長 佐藤栄一氏による国際大会の開催に関するプレゼンテーション

佐藤市長のプレゼンテーションは、国際大会の開催を“単発のイベント”として語るのではなく、都市の成長戦略と一体で位置づけている点に特徴があった。宇都宮市は人口約51万人、年間の観光入込客数は約1,271万人という都市規模の中で、スポーツを街の魅力と回遊を生み出す装置として組み込みながら、国際大会の誘致と定着を図ってきた。

具体的には、2016年からFIBA 3x3 World Tourを継続して開催し、2019年には世界一決定戦「Final」も実施。さらに2022年からは開幕戦「Opener」を継続して引き受けるなど、単年度の盛り上がりではなく、長期で“信頼と実績”を積み重ねてきたことが示された。会場づくりでも、宇都宮二荒山神社大鳥居前に特設コートを設置するなど、歴史資産と都市景観を生かした「街なか開催」を実装し、観戦体験を都市体験へと拡張している。

また、都市の基盤整備として、2023年に地域由来の再生可能エネルギー100%で走行するLRT(ライトライン)が開業したことにも触れた。モビリティの進化は、観戦や来訪を“点”ではなく“回遊”として設計し、スポーツを起点に街の体験価値を高める上で重要なピースとなる。海外の文脈で言えば、public realm(公共空間)を活用したplacemaking(街づくり)や、都市の受け入れ基盤を含むhost city readiness(開催都市としての成熟度)といった論点とも響き合う。

さらに、成果を“競技の盛り上がり”に留めず、次世代へ波及させる設計も強調された。学校へのボールやゴールの整備、小中学生の招待、バスケットボール教室や学校訪問などを通じて、子どもたちが世界レベルのプレーを目の前で体験する機会を積み重ねてきたという。市長自身が、こうした継続が市民の誇りにつながっていると述べた点は、経済指標だけでは測れない、「intangible value」(都市の無形資産)が育っていることを示唆している。

宇都宮と北九州――アーバンスポーツで都市価値を高める「二つのモデル」

北九州市 都市ブランド創造局 にぎわい担当理事 森川洋一氏の登壇

本フォーラムの特徴は、宇都宮市の歩みを軸にしながら、北九州市の実践を同じ場で重ね合わせ、都市モデルとしてのreplicability(再現性)を高めた点にある。北九州市の森川洋一氏は、ラグビーワールドカップでの代表チームキャンプ受入や、コロナ禍で世界体操・新体操選手権を有観客で開催した経験を転機として紹介し、感染対策も含めた運営を「北九州モデル」としてつくり上げたと語った。危機対応も含めて大会価値を最大化する実務知は、これから国際大会を検討する都市にとって重要な学びになる。

北九州市の示唆がより鮮明なのは、アーバンスポーツを「若者に選ばれる街」という都市ビジョンに直結させている点である。小倉駅前などのオープンスペースで大会を開催することで、普段スポーツに関心のない人も思わず足を止め、街の空気が一気に変わる――この言葉は、アーバンスポーツが都市ブランディングに効く理由を端的に示している。競技を「観に行く場所」に閉じ込めず、生活動線上のpublic realm(公共空間)に“出現”させることで、街の日常に新しい景色と会話が生まれる。そこには、観客数や経済効果といった指標だけでは捉えきれない、都市の心理的な変化(街の高揚感、誇り、参加意欲)がある。

さらに北九州市の経験は、イベントの実装がstakeholder alignment(合意形成)のデザインそのものだという点で示唆深い。市役所前の道路封鎖を伴う実施は、警察や地域との調整などハードルが高い。しかし北九州市は、目的を丁寧に説明しながら関係者と向き合い、合意形成を積み重ねて実現してきたという。そのプロセスを経て、若者が街の担い手として地域活動に参加するようになるなど、都市側の“主体”が育つ良い循環が生まれている。国際大会を契機に市民参画をどう生むか――北九州市は、開催都市に求められる能力が運営力だけではなく、地域の納得と協力を引き出す社会実装力であることを示している。

【前編】はここまで!

【後編】では引き続き、FIBA3x3統括責任者であるアレックス・サンチェス氏の考える国際大会開催都市の提供価値や足利銀行やゼビオホールディングスといった企業の国際大会開催への関与の仕方について紹介します。次週をお楽しみに!

◇ Splat Inc.

Splat Inc.について
Splat Inc.
Splat Inc.は2023年3月に設立されたコミュニケーションデザインカンパニーであり、外資系戦略コミュニケーション企業で培った豊富な経験をもとに、スポーツが持つ本質的な価値を社会に広く伝え、企業活動や日本の成長へとつなげることを使命としています。競技の枠を超えたスポーツの可能性を可視化し、スポーツと企業、そして社会を結ぶ戦略的コミュニケーションをデザイン・実行することで、差別化された強固なブランド構築を支援しています

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