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ミズノが海外で高く評価される「商品力」の源泉とは? 養老工場から『ええもん』を世界へ【前編】(JSPIN事務局)

2026.05.28

総合スポーツ用品メーカーのミズノが好調だ。2026年3月期の連結決算で、売上高が前期比7.8%増の2,590億円、純利益が同20.6%増の184億円で、いずれも過去最高を記録した。グループ全体の成長を牽引しているのが、海外市場での売上拡大だ。

ミズノはいかにしてグローバルで存在感を発揮しているのか。ミズノグループを「ものづくり」から支えるミズノ テクニクス株式会社(以下、ミズノ テクニクス) 代表取締役の寺下正記氏に話を聞いた(※)。

(※肩書は取材当時。現在は本社ダイアモンドスポーツ・ラケットスポーツ事業部長 兼 事業企画販促部部長)

ミズノのスポーツ用品製造を担うミズノ テクニクス

「『利益の利より道理の理』。この言葉を疑ったことは一度もありませんよ」

アスリートを支える“聖地”とも呼ばれる養老の地で、ミズノ テクニクスの寺下氏は朗らかにそう語る。

ミズノのスポーツ用品の製造・管理を担うミズノ テクニクスは、その前身である美津濃養老工場が1943年3月に岐阜県で創業。当初は家具など木工日用品を生産していたが、戦後すぐに野球バット、木製テニスラケット、スキー板など各種木工スポーツ用品の開発・製造に取り組み始めた。現在は養老工場に加え、波賀工場、山崎ランバード工場、氷上工場(いずれも兵庫県)があり、合計4つの工場を持つ。

ミズノ テクニクスの本社養老工場

長年にわたりものづくりのDNAが脈々と受け継がれ、日々研鑽を重ねる職人の「クラフトマンシップ」が体現される。数多くのトップアスリートも認める高品質の製品を生み出すミズノ テクニクスは、まさにミズノグループの心臓部というべき存在だ。

ミズノでは「利益の利より道理の理」という創業者の言葉が大切にされている。利益を出すことはもちろん大事だが、それ以上に“より良いもの”を追求し続け、それにより培われた知見と技術力をもって社会の役に立つ。寺下氏はミズノに息づく不変の価値観を誇りに思っている。

海外売上高比率が過去5年で40.1%まで伸長

そんなミズノの業績がここ数年、大きく伸びている。

2022年度・2023年度・2024年度・2025年度の連結決算において、売上高ならびに純利益が4年連続で最高記録を更新。2025年度も売上高が前年度比7.8%増、純利益が20.6%増と過去最高を記録している。

国内市場はもちろん海外市場でも存在感を示しており、2020年度に29.3%だった海外売上比率が、2025年度には40.1%にまで伸長している。

海外市場で特に成長している事業の一つが、ゴルフだ。

米国の調査会社「Golf Datatech」によれば、2025年1〜2月のアイアン部門において、ミズノの「JPX925 HOT METAL」シリーズが全米1位のシェアを獲得した。米国で高い人気を誇る競合他社の新製品発売時期と重なりながらの首位獲得は現地でもインパクトを与え、メーカー別シェアでも全体の15.3%を占めて4位となった。

ツアーではミズノのアイアンを使う選手が活躍している。ジュニア時代よりミズノ製のクラブを使い、ブランドアンバサダー契約を結んでいる平田憲聖プロは今季から米国男子ツアー(PGAツアー)に参戦している。他にもミズノのアイアンを使用している海外選手がツアー優勝を果たしており、その高い品質がより広く認知されるようになっている。

ゴルフクラブはミズノの主力商品群のひとつ

ゴルフだけでなくフットウェアも海外で成長

フットウェア(シューズ)も大きく成長している事業の一つだ。

特にフットボールシューズはグローバル全体で売上を拡大しており、2桁成長を続けている。セルヒオ・ラモス(スペイン)やジョアン・フェリックス(ポルトガル)といった一流選手や、S.S.ラツィオ(イタリア)、ASモナコ(フランス)、FCアウクスブルク(ドイツ)など欧州クラブとの戦略的なパートナーシップを通じて、グローバルでのブランド価値向上を実現している。

ランニングシューズはパフォーマンスランニングブランドとしての地位を再構築。スピードランナー向け商品群の刷新、企画・デザインチームを欧州に設置して売上規模の大きい欧州市場のニーズを反映、ランニングイベントへの投資などが奏功してグローバル全体で再成長を果たしている。

さらにフットボール、ランニングと並んで注力カテゴリーとして位置付けられているスポーツスタイルシューズが欧州、アジア・オセアニアを中心に順調に成長している。パフォーマンス分野で培った機能性と日常生活にフィットするファッション性を融合させたライフスタイル向けシューズで、新たな顧客層を開拓している。

「シューズは用具と違ってスポーツ以外の場面でも使用される。新たに市場参入する際にはシューズでミズノを認知してもらい、その上で他のアイテムも展開している」と寺下氏が話すように、グローバルにおけるマーケティング戦略において、シューズは重要な役割を果たしている。

ミズノ テクニクス株式会社 代表取締役(※取材当時)寺下正記氏

グローバル成長の源泉は「商品力」

なぜミズノの商品がグローバルでこれほどまでに広がりを見せているのか。寺下氏は「商品力」がその源泉だという。

シューズであればミズノ独自の素材と構造によって、それぞれの競技特性や目的に合うかたちでフィット感、軽量性、耐久性、反発性、クッション性などのさまざまな機能を実現。その履き心地を高く評価する声が多く聞かれる。

ゴルフでは、米国でシェア1位を獲得したアイアン「JPX925 HOT METAL」シリーズは、高強度の素材によるパワーに独自の新設計によるフェースを組み合わせることで飛距離と寛容性を追求。これまでの「ミズノ=上級者向け」というイメージを打破し、米国のゴルファーの心をつかんだ。

「もちろんマーケティングも重要ですが、“空想”ではなく“実物”をマーケティングする。プロダクトオリエンテッドなブランドとして、それぞれの市場にどのように『ええもん』を送り届けるのかが大事だと考えています」(寺下氏)

華やかな演出で目を引くような広告宣伝に頼るのではなく、実際に商品を使えば分かる機能的価値で消費者の信頼を得る。それがミズノの世界で戦う道筋だ。

ミズノが展開するスポーツ用品の数々。ミズノ テクニクス本社養老工場にて。

スイングデータ計測などでテクノロジー活用も進める

もちろん、ただ単に『ええもん』を作ればいいと考えているわけではない。

例えば、ミズノのアイアンが米国で大きくシェアを伸ばした背景には、フィッティングツール「シャフトオプティマイザー3D(※)」の存在が大きい。

「3球打てば、ゴルフが変わる」というコンセプトのもと、シャフトの動きとスイング挙動の9要素を同時に測定できる機器で、個々人のスイング特性を科学的に分析できる。2017年の開始以降、全世界で60万件以上のフィッティングデータを蓄積しており、ゴルファーの主観や先入観にとらわれることなく、わずか3球で最適なシャフト/ヘッド/ライ角が示される。

試打することでスイング特性を測定できる

「私もゴルフをやっていて感じるのですが、一般のプレーヤーこそ自分に合ったクラブを使うことが大事。実際にスイングデータを測定して自分に合ったクラブに換えてみると、驚くぐらいショットが変わります。スコアに直結するとあって、日本でも米国でも非常にニーズが高い」(寺下氏)

シャフトオプティマイザー3Dは今やゴルフショップの店員にとっても欠かせないツールとなっており、米国では2200店以上の小売店に導入されている。当然、計測用クラブにはミズノ製のヘッドが装着されており、フィッティング目的で来店したプレーヤーに実際にミズノの商品に触れて品質の高さに気付いてもらえる機会を創出している。

計測されたデータはその場で確認でき、特性に合った商品を手に取る機会にもつなげられている。

(※「シャフトオプティマイザー3D」について、2025年12月に新たなフィッティングツール「SET OPTIMIZER」が導入されています。詳細情報については以下リンクからご確認ください。世界で唯一のフィッティングツール「SET OPTIMIZER」運用開始|ミズノ株式会社

ゴルフクラブのカスタムオーダーも

また測定結果に基づいて、自分専用のクラブをカスタムオーダーすることも可能だ。米国であればアトランタの直営工場で製造され、受注から1~2週間以内に自宅まで届けられる(日本国内は5日以内)。

それを可能にしているのは、国内と同様、海外の工場でも“ミズノのものづくり”のかたちを追求しているからだ。寺下氏はこう語る。

「『品質は工程で作り込む』を合言葉に、各工程でしっかりと良品条件を定める。次工程に不良や手戻りを発生させない。異常は1個で止める。私たちの強みは国内で実際にものづくりをしている点ですから、そこで得られたノウハウを(海外工場にも)共有しています。

日本人の目線で見ると、海外の方はこだわりが薄いように感じます。“これぐらいでいいだろう”というところを、“いやいや、ここまでやらなあかんねん”とミズノのものづくりを伝えていくので、どうしても時間がかかる。特別なことをやっているわけではなく、基本に忠実な形で、やらなければならないことを諦めずに続けていきたい」

「ミズノのものづくりを伝えていく」と寺下氏

少子高齢化・人口減少が進む中、国内スポーツ市場の拡大は現実的ではない。海外売上比率を上げていくことは至上命題といえるだろう。どこの市場にどのようなチャンスがあるのか。どの製品を、どのように売っていくのか。変化の速い現代のビジネス環境において、正解を見つけることは決して容易ではない。

ただ、それでも決してミズノの信念が揺らぐことはない。「これからもミズノらしく、着実に地に足をつけて、世界中の人たちに『ええもん』を届けていきたいですね」(寺下氏)。

◇JSPIN事務局

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