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川崎フロンターレ:現地の日系子会社と提携し、ベトナムでサッカースクールを展開

2022.11.08

川崎フロンターレは、東急が主催する国際交流試合での現地クラブとの対戦を機にベトナムでの活動を開始。当初はサッカーを通じた国際交流イベント等の活動を行っていたが、東急の現地子会社BECAMEX TOKYU CO.との事業提携を進め、2021年5月、ベトナムにサッカースクールを開設した。

展開コンテンツサッカースクール
展開先ベトナム、タイ

ベトナムの日系子会社との事業提携で、現地での人材と運営機能を確保

2013年、川崎フロンターレ(以下、フロンターレ)は、東急株式会社(以下、東急)の主催する国際親善試合「東急ビンズンガーデンシティカップ2013」に参加し、ベトナムのサッカークラブ、ベカメックス・ビンズンFCと試合を行った。

この試合を皮切りに、子どもたち向けのサッカー教室、サッカークラブのアカデミーへの指導者派遣、「ベトナム国際ユースカップU-13」の開催、児童養護施設への訪問など、ベトナム全土でサッカーを通じた交流活動を継続してきた。そして、ベトナム進出から8年後の2021年5月、ベトナムの現地法人であるBECAMEX TOKYU CO.(以下、ベカメックス東急)と基本協定を締結し、ベトナム初のJリーグクラブによるサッカースクール事業を開始した。

ベトナムで事業展開を推し進めるにあたって、サッカースクール事業をスタートする手続きと、現地の人材リソースの確保が課題だったが、ベカメックス東急との提携によって法人を設立せずに事業を前進させた。ベカメックス東急の親会社である東急は、長年にわたり現地企業との法人立ち上げや政府とのネットワーク形成などを行っていたため、事業開始にあたって必要な手続きは東急との連携によってスムーズに進めることができた。

現地での人材リソースの面では、提携の枠組みを活用した。既にベトナムでまちづくりの事業を進めているベカメックス東急の内部にサッカースクール運営の部署を新規で立ち上げ、フロンターレの日本人コーチ2人を含む、サッカーチームの運営メンバー5人を所属させるというスキームを採用。新しく現地法人を立ち上げることなく事業をスタートさせた。ベカメックス東急が運営の枠組みを提供している一方で、フロンターレはコーチの派遣を含むサッカースクール本体の運営機能を提供している。

日系大企業子会社との提携ハードルは高いようにも思えるが、現地事業とのシナジーが見込めれば提携の可能性は十分にある。ベカメックス東急はベトナム南部に位置するビンズン省の開発を行っている。ベカメックス東急にとっての提携メリットはベトナムで絶大な人気を誇るサッカーというコンテンツを開発中の都市に取り入れることで、街の価値を向上させられることであった。

健康、教育の観点からローカライズした指導を提供

2022年6月時点でサッカースクールには153名が在籍。ベトナムの子供たち向けにローカライズしたスクール運営を行っている。ベトナムでは子供の肥満が社会問題になっており、運動機会を提供すること自体が地域貢献につながる。

また、日本式の後片付けや整理整頓といった社会性を育む指導が、ベカメックス東急がターゲットとしている富裕層ファミリーを中心に好評を博している。日本ではサッカースキルの獲得という側面が強かったスクールだが、ベトナムでは健康維持機能と教育機能を有し、現地ニーズに合わせて事業展開をしている。

ベトナムに進出する日本企業にネットワークの場を提供

フロンターレが日本企業とベトナムの懸け橋となったケースも出てきている。例えば、日本のスポンサー企業から、ベトナムにまちづくりに関係する東急の現地子会社と繋いでほしいといった要望も確認されている。

また、フロンターレがベトナムにて主催する大会やイベントには日本企業にスポンサーとして支援するもらうことが多いが、大会にはベトナム大使や現地スポンサー企業が来場することもあり、日本のスポンサー企業にとってのネットワーキングの場としても活用されている。

選手獲得を機に他地域での展開も視野に

2022年1月に、タイのスター選手であるチャナティップ選手が加入した。2022年5月には2年ぶりにタイでサッカークリニックを開催するなど、現地サポーターとの交流を進めている。チャナティップ選手獲得の効果として、タイでの認知度も大きく向上している。ベトナムでの経験を活かし、タイでも認知度向上と事業展開との好循環を推進していくことが期待される。

株式会社川崎フロンターレ サッカー事業部 海外事業担当 池田圭吾氏


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※所属・肩書等は2022年6月の取材当時のものとなります

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