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スポーツ産業成長「7つのキーワード」#3:経営もマーケティングも「人」(スポーツシンクタンク戸井田朋之)

2022.07.20

画像=著者提供

コラムをご覧いただきありがとうございます。前回に引き続き、第3回をお届けいたします。

今回の第3回では、

⑤どの業界でも有効活用したい「インフルエンサー」 

⑥「利己主義」人間でなく「利他主義」スタッフの育成 

⑦最強軍団を作るために必要なリクルート活動「人材6段階説」と「4つのワーク」

をお伝えいたします。

⑤どの業界でも有効活用したい「インフルエンサー」

いつの時代でも世界レベルのトップチームやトップ選手が着用するモデルが注目され、市販されるモデルの中でも圧倒的な販売数を誇ってきました。アパレルの世界でも同じ図式で表現され、トップアイドルやトップモデルの着こなすブランドやアイテムが人気を博してきました。「シャワー効果」と言います。

近年では、インスタグラムを通じて世界発信をしたり、ユーチューバーがTVCM以上に効果を発揮する場面もあります。自社のブランドを着こなす最適な人選で、売上高は変わってきます。

例えば、ジャスティン・ビーバーや木村拓哉が着用していた「Supreme」が人気を博し、国内店舗でも行列ができました。スポーツの世界でも、非公式ながらマラソンで2時間を切る記録を出したケニアのエリウド・キプチョゲ選手が着用していた「NIKEの厚底シューズ」が有名です。

箱根駅伝や実業団のニューイヤーズ駅伝では一気にNIKE一色となりました。まだ記憶に新しい東京オリンピック・パラリンピックの日本代表選手団が着用されていたASICSのオレンジウェアとシューズなども人気商品となりました。

総じて、メディアに露出する頻度が多く、またスポーツ誌やファッション誌にも取りあげられそうなトップアスリートに着用してもらうことによって、一般の広告を出すよりも大きな費用対効果が生まれてきます。

⑥「利己主義」人間でなく「利他主義」スタッフの育成

スポーツ業界では、運動部出身のビジネスマンも多く、チームワークがとても大切だと経験してきた人も多いように感じます。組織の育成方針としては「個」の能力を重視しながらも「チーム」としての総合力を上げることが、企業全体のパワーアップにつながります。

言い換えれば、エゴイストで自分の保身ばかりを考える「利己主義的」スタッフよりも、チームとしての総合力アップを考える「利他主義的」スタッフを育てることによって、危機意識は増し、多少の向かい風にも強い基盤が養われます。企業の優勝劣敗のキーは「ヒト」だと感じています。

店舗スタッフがいかにプロフェッショナルなサービス精神を持ち接するか、自分のFacebookやLINEのネットワークを駆使して集客につなげるか。スタイリストとして素敵なアドバイスができるかどうか。Dr.ストレッチのような「心のもみほぐし」、そして保険の窓口のような「コンセルジュ的人財」が重要です。

ドラッグストアで言いますと、ドクターのピンチヒッターにもなりえる「薬剤師」さんの存在が売上を大きく左右していました。白衣をまとい、コロナ感染者が相談にも訪れるお医者様には近づけない人たちの大きな助け舟になりました。ドラッグストアは、一度の外出でまとめ買いをする消費者にも寄り添っており、店舗の中にコンビニがあるような感覚にもなるでしょう。

今一度原点に戻って、店舗内スタッフやオフィス内勤者も、店舗内やオフィス内だけに留まらず「いち営業マン」という視点で見るべきだと思います。

⑦最強軍団を作るために必要なリクルート活動「人材6段階説」と「4つのワーク」

高校野球の上位校を見ていましても分かりますように、中学時代に4番を打ち投手としてもチームを導いてきた選手が、強豪校に入学していく様相をよく目にします。そして、そんな中で活躍する選手が甲子園出場を手にし、ドラフトで選択されていくような構図です。

好投手、好選手が集合すればするほど、強豪校になっていきます。箱根駅伝でも同じことが言えます。企業も、そのような人材を求めてリクルート活動されるわけですから、優秀な人材を幾度の試験で選抜していくわけです。

ただ、表現は乱暴かもしれませんが、「落ちこぼれ」はいつの時代でもどの世界でもあるわけで、下図で言いますと「人在」「人罪」「人災」がそれに当たります。でも、その方たちには必ず良いところを見つけてあげて「褒めて」あげてください。自信を取り戻し、見違えるように成長してきます。足を引っ張っていた人がかえって下支えになって、チーム力は確実にアップします。

3回にわたり、2022~2025年のスポーツ産業全体成長への「7つのキーワード」をお伝えしてきました。

結びに、世界の超人と言われるアスリートや成功を手にされてきたビジネスマンの「共通点」を探してみました。考え方をフレキシブルに、そしてアクションは早めに、常にアンテナを張り巡らせておき、チームとしてパワーアップしていく。このことが個人の成長や企業の業績をアップさせる大きな要素だと思います。皆さまのご参考になれば幸いです。

◇戸井田 朋之(といだ・ともゆき) 

株式会社スポーツシンクタンク 代表取締役社長 CEO

1953年生まれ。元順天堂大学スポーツ健康科学部客員教授。文化服装学院・文化ファッション大学院大学客員講師。2024年パリオリンピック夏季大会国際アドバイザー。パリ在住。

慶應義塾大学卒業後、株式会社デサントに入社。入社3年目でフランスのパリに駐在し、ヨーロッパの主たるリゾートスキー場のスキースクールユニフォームの受注活動を行い、現在の欧州販売網の基礎を作った。1980年からIOC(国際オリンピック委員会)会長となった故サマランチ氏に息子のように可愛がられ、1984年サラエボ・オリンピック開会宣言の場でのデサントウェア着用シーンが世界中に報道され、一気に同社を国際ブランドとデビューさせた牽引者。

今まで計21回、オリンピックの現場で世界のトップアスリートやIOC(国際オリンピック委員会)を支え、並行して英仏語に留まらず多国語マスターの能力を活かしてデサントブランドの国際戦略を先陣。帰国後は、企画部長やSP販促部長を歴任し、取締役就任後は新たに地方自治体との官民コラボレーションにも成功。過疎地指定されている群馬県みなかみ町を復活させ経済産業省から表彰される。

また一方ではDA PUMP、モーニング娘。、加藤あい、優香など新人タレント発掘の傍ら、スポーツ業界のCMに初めて芸能人を起用するなど、業界きっての積極的な「仕掛け屋」。そして再度のヨーロッパへ赴任。パリ、ローザンヌ、ロンドンで駐在後、2017年7月起業独立し、現在は国内外の大学で教鞭をとる傍ら、海外企業・国内企業複数社とコンサルティング契約を結び活動中。JALの機内食「うどんde SKY」の名付け親。

スポーツ産業の国際戦略には、情報力・販売力・物流力・交渉力そして継続的マーケティング力が必要と説き、グローバルな視点に立つモノの見方は、シャープで素晴らしいと評価されている。


※所属・肩書等は2021年12月の執筆当時のものです

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