スポーツチーム用のソフトウェアを手掛けるSunbears(サンベアーズ)は、大学スポーツのスマートな練習計画と運営を実現するために、海外の開発会社や国内外のコラボレーターと協業してSunbearsクラウドソフトの設計・開発をしてきた。
スポーツテック業界の一企業として、昨年11月28日から30日までドイツ・ミュンヘン で開かれた世界最大級の国際スポーツ見本市「ISPO Munich 2023」に参加。最新の市場動向 や需要をリサーチするとともに、世界各国の意欲的で熱心なアスリートやプロフェッショナルから インスピレーションを得たので、この場で報告させていただきたい。
新しい視点から見るスポーツの世界
『New Perspectives on Sports(スポーツに対する新しい視点)』をモットーに掲げた「ISPO Munich 2023」は、新しいトレンドやアイデアに満ち溢れ、単なるスポーツ用品の見本市を超えた、世界のスポーツビジネスの未来を象徴するようなイベントだった。
ISPOによると、出展者数は 2,400を超え(前年より57%増)、外国企業の出展者数も同64%増えて54カ国となり、全出展者 数に占める割合は9割に上ったそうだ。来場者数は約40,000人とも伝えられている。
Sunbearsマーケティングチームからはニューヨークとロンドン在住のメンバー3名が、小雪がちらつく中、会場となるメッセ・ミュンヘンに集まった。私たちにとっては海外展示会への初出展、しかも世界最大級のメッセとあって、その規模と先進性において正直、驚きの連続だった。
#イノベーション 、#持続可能性、#環境配慮
会場は11のセグメントに分かれており、それぞれにテキスタイルやスノースポーツ、調達&製造、ヘルス&フィットネス、アウトドアなどのテーマが掲げられている構成だった。
メインのフューチャーラボでは、小売りテクノロジーの最新トレンドや、スタートアップ企業によるピッチなどが行われていたほか、ゲームチェンジャー・スポーツハブと題したセクションでは、AIやXR、ウェアラブル、センサー技術といった最先端のテーマが体験できる場も設けられていた。加えて、複数のステージで業界リーダーやアスリートの講演会が行われており、会場は連日熱気に包まれていた。
中でも印象的だったのがサステナビリティ・ハブだ。アウトドアを含むスポーツ業界で注目されているサステナビリティへの取り組みを、生産者が原材料から中間加工段階、最終材料まで展示することで、私たちにインスピレーションを与え、同時に教育的な情報も提供してくれていたからだ。
来場者が革新的かつ循環型の素材に直接触れて体験することができるマテリアル・ラボの展示では、卵の殻、パイナップルの葉などの農業副産物、藻類、麻などのバイオ廃棄物から作られる新たな素材、生分解性の糸や織物、植物由来の羽毛代替素材などが紹介されていた。
藻類から作られた靴底フォームの最先端技術(米国ブルーム社)や、ヒマ(トウゴマ)豆から作られたバイオベースポリマー(仏アルケマ社)などは、持続可能な循環型マテリアルとして注目に値すると思う。
また原料としての菌糸体の可能性を展示したサーキュラー・エクスペリエンスの展示では、きのこなどの菌類が持つ根の複雑な構造に着目した材料の研究開発が示されていて、自然界の力を活用したソリューションについても学ぶことができた。
EUグリーンディールの包括的な実施を背景に、多くの製品コンセプトが持続可能性や環境配慮、循環経済と強く結びついていることは今の時代に沿った流れでもあり、世界的に今後ますます拡大していくものと思われる。
脱炭素化やプラスチック代替品などのイノベーティブな素材や製品などの展示からは、気候変動対策はスポーツビジネス分野も例外ではないということ、むしろスポーツ界から積極的に対策を講じようという熱量を肌で感じることができたと言っていいだろう。
このほか、欧州のスポーツ展示エリアは精巧かつ顧客フレンドリーなデザイン構成となっており、 欧州連合(EU)によって支援されているヨーロッパの企業(中小企業から大企業まで)がISPO Munichの主役でもあることから、EU各国政府によるスポーツ産業拡大へのサポートが強く反映されているのを見てとれた。
会場内にあるたくさんのコーヒースタンドでは地元のバリスタが活躍し、来場者は彼らのコーヒーやランチを楽しんでいたのも微笑ましかった。そこかしこに設置された快適な共有スペースでは、 来場者と出展者が気軽に休憩したり商談をする姿が見られ、ISPO Munichにおけるスポーツコミュニティ間のネットワーキングも垣間見ることができた。
私たちは今回、こういった来場者と出展者へのきめ細かな配慮とサポートのレベルの高さにも感銘を受けた。スポーツ分野の振興と発展に対する欧州各国政府の積極的な関与が、それに反映されているのではないかと思う次第だ。
Sunbearsが出展で達成したこと
Sunbearsはスポーツ庁が設置した「ジャパンエリア」内のパネル展示コーナーに出展させてもらった。他の革新的な企業と共に、日本のスポーツシーンを代表してISPO Munich 2023に参加することが実現できたのも、同庁が日本企業の海外展開支援を目的としたジャパンエリアを設置してくれたお陰だ。
今回の出展を通じて私たちが達成できたことを簡単にまとめると下記の通りとなる。
- 現在の協力者や将来のパートナー候補、業界内で親交のあるブランド、コラボレーション相手のブランドと対面することができた。
- Sunbearsツールの新しい展開と今後の計画を業界に発信することができた。
- 欧州のスポーツシーンに関する知識を深め、市場動向や需要、トレンドをつかむことができた。
- 国際的なスポーツ展示会の中でも最大規模の展示会への参加を通じて、意欲的で熱心なアスリートやプロフェッショナルに囲まれ、多大なインスピレーションを得ることができた。
おわりに
多くの学びと熱量を感じたISPO Munich 2023は、Sunbearsチームにとって今後の世界展開に向けた貴重な体験となった。同時に、各国スポーツ産業の国際展開への可能性や、スポーツビジネスが担う社会的責任の大きさについて、改めて考えさせられた3日間であった。この経験を糧に、私たちは世界のさまざまなスポーツチームの運営効率とパフォーマンス向上をサポートするために、着実にSunbearsツールのアップデートを重ねていこうと思う。
◇廣浦 百合子(ひろうら・ゆりこ)
Sunbears コンテンツクリエイター/ NY 州公認マッサージセラピスト
Sunbears マーケティングチームにおいてコンテンツ制作、翻訳を担当。一方でニューヨークの
舞台でのダンサー経験を持つ。マーサ・グラハム・カンパニーII でのアンサンブルを皮切り
に、国内外のプロダクションやフェスティバルへ多数出演。2019 年には Shed 劇場のオフブロ
ードウェイミュージカルにオリジナルキャストとして参加。現在はニューヨーク州公認マッサ
ージセラピストとして活動中。ダンサー特有の怪我の予防、リハビリに特化したサービスに力
を入れている。
※所属・肩書等は2024年3月の執筆当時のものです。
▽ISPO2024ジャパンエリア出展企業募集中
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