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プロ野球界及びスポーツ界のグローバルな発展を目指して(パシフィックリーグマーケティング 髙木隆)

2023.10.03

レブンスポーツ台湾とパシフィックリーグマーケティングスタッフの集合写真 ©PLM

2023年プロ野球シーズンは、シーズン直前の3月に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本代表が優勝したことにより、パ・リーグコンテンツを海外展開する上で、大きな追い風となった。選手・チームサイドのグローバルでの躍進の流れに乗り、パシフィックリーグマーケティングは台湾にて現地プロモーションを行った。本稿では、当プロモーションに至る背景であるパ・リーグコンテンツの海外進出状況、海外グループのビジョン、そして、台湾での本年度の取組実績と振り返り、今後目指す姿についてお伝えする。

パ・リーグコンテンツの海外進出状況

パシフィックリーグマーケティングは「プロ野球の新しいファンを増やす」というミッションを掲げ、常に新しいファン市場拡大を目指している。2023年9月現在、台湾、米国、カナダの3か国で海外放送局とパートナーシップ契約をしている。特に台湾は10年連続でパ・リーグ主催試合を放送・配信しており、現地にて多くのファンから支持を得ている。

海外グループ内のビジョン

2023年のプロ野球シーズン開幕前に戦略的にパシフィックリーグマーケティングの海外事業を推進すべく、海外グループのビジョンを「プロ野球界、スポーツ界のグローバルな発展を通して、日本の社会全体を明るく元気にしていくこと」と設定した。

それにより、社外ステイクホルダーとの折衝時に同ビジョンを示し、提案内容とその背景について一貫性を示すことが可能になった。後述するコロナ禍を経た特殊な状況下でのコミュニケーションにおいて、同ビジョンを掲げたことは社内外の意思統一を図るために重要な意味があった。

台湾での2023年度の取組実績と振り返り

「パ・リーグコンテンツの海外進出状況」を踏まえて、「プロ野球界のグローバルな発展」を可能にするパートナーとして、コロナ禍前に取り組み実績のあった台湾のプロ野球チームである楽天モンキーズと、台湾でのパ・リーグ主催試合の放送・配信権契約先のイレブンスポーツ台湾にプロモーション協業を打診した。楽天モンキーズ、イレブンスポーツ台湾ともにオンライン会議のみで企画立案・準備を行い、当日を迎えた。

2023年7月21日から23日に台湾・桃園にて楽天モンキーズ主催のYOKOSOイベント(日本がテーマのイベント)にパ・リーグ6球団のブース出展を行った。ブース出展の目的は、これまでコロナ禍で実施が物理的に不可能であった台湾プロモーションを実際に現地で実施し、露出の最大化を図ることであった。

そして、パ・リーグコンテンツ(球団・選手)に対する興味・関心を高めるためであった。主に以下3点の施策を行い、3日間で約1,000人の来場者(オフライン)の獲得に成功した。さらに、各来場者のSNS投稿(オンライン)の拡散による認知拡大も達成した。

  1. 来場者が好みのパ・リーグ球団のチームユニフォームを着用できるようなブースを設け、写真撮影とSNS投稿を促進
  2. SNS投稿をした来場者を対象としたサイングッズ抽選会の実施
  3. 楽天モンキーズのチア(楽天ガールズ)6名がパ・リーグ各球団のユニフォームを着用の上、ブース内容を紹介。その様子を放送し、イレブンスポーツ台湾の放送枠内で露出を獲得
パ・リーグ6球団のユニフォームを着る楽天ガールズとイレブンスポーツ台湾のアナウンサー陳雄威さん ©PLM

異国の地で海外企業との協業を行うにも関わらず、コロナ禍ということもあり、コミュニケーションは、過去に経験のない形で進行していった。準備期間を含めて全て英語によるオンラインでの打ち合わせしかできなかったからだ。

しかし、現地での準備段階で私の不安は杞憂に終わった。イレブンスポーツ台湾は連日6名のスタッフを現地に派遣し、ブース設営から装飾まで完全なクオリティで準備を進めてくれた。また、台湾の現地言語での顧客対応など、我々ではできないことを高いクオリティで遂行してくれたため、運営上の問題も皆無だった。

今回のプロモーションの成功要因は、本プロモーションに関する上位概念をイレブンスポーツ台湾と相互認識・理解できたことに尽きる。その上位概念とは、海外グループ内のビジョンの一部である「プロ野球界(パ・リーグ)のグローバルな発展を目指す」である。

今回の施策は、短期的に視聴を促す広告出稿ではなく、本質的に台湾でのパ・リーグコンテンツの人気拡大を目指すため、「コト体験」にフォーカスした。台湾のファンにとって普段は身近にはないパ・リーグのユニフォームを着た写真の投稿や思い出が、中長期的にパ・リーグの国際的なブランディング・ロイヤリティ強化に繋がると確信している。

最後に、今回のプロモーションについてイレブンスポーツ台湾のFrank氏にも感想を伺った。

「他海外スポーツコンテンツホルダーを含めて今回のようなプロモーションイベントは初であった。イレブンスポーツ台湾のスタッフにとってもファンに直接的にリーチすることができ、ユニフォームを着たお子様、カップル、ご家族のファンが喜ぶ姿がとても印象的であった。そして何より、パシフィックリーグマーケティングとの企画準備や当日の共同運営を通して強い絆ができたので、今後もファンの心を動かす取組を両社で行っていきたい」

今後目指す姿

今後も台湾においては台湾プロ野球球団、イレブンスポーツ台湾、台湾マスメディアとともに、パ・リーグのファンベースを中長期的に醸成していく。他国においては、過去に放送実績もある韓国や、オーストラリア、メキシコなど野球に親和性のある地域でのパートナーシップ契約締結を実現することにより、多くの方にパ・リーグの野球を楽しんでもらいたいと考えている。また、何よりスポーツを通じて、日本と海外の架け橋になりプロ野球界にとどまらずスポーツ界全体の発展に貢献していきたい。

◇髙木 隆(たかぎ・りゅう)

パシフィックリーグマーケティング株式会社
事業開発部 海外グループ マネージャー兼NFT部門ディレクター

米国の大学・大学院卒業後に4年間米国の監査法人で財務監査業務を担当。帰国後、コンサル会社にて企業価値評価業務を担当し、国内外のM&A案件に携わる。2020年に渡米前からの夢であったスポーツビジネスに挑戦すべくパシフィックリーグマーケティング株式会社に入社。現在は主に海外放映権販売を担当。


※所属・肩書等は2023年9月の執筆当時のものです

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