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西川精機製作所:ものづくりの零細企業が、日本製アーチェリー弓具の復活と海外展開へ挑戦

2023.08.10

純日本製アーチェリーハンドルEagle-K

西川精機製作所は、創業60年以上のメッキ用装置・器具の製造・メンテナンス事業としてBtoBの事業を行う東京都江戸川区のものづくり零細企業である。金融危機で業績低迷に陥る中、西川精機製作所のコア・コンピタンスを活かして、今は日本企業による製造がされていないアーチェリー弓具の製造に挑戦。産官学連携により日本製アーチェリーが作られていた頃のノウハウを現代向けに利活用し、製品を開発。政府と連携して展示会出展等を行い、アーチェリー市場が大きい海外へ販促強化を行う中で、海外選手や大手販売代理店による取扱いを実現した。

展開コンテンツスポーツ用品
展開先台湾、欧州、北米

モノづくり零細企業がコア・コンピタンスを活用して、アーチェリーの弓具開発に挑戦

西川精機製作所は、従業員10名程度の江戸川区のものづくり零細企業である。2000年代の金融危機以降、主要得意先の事業撤退・生産拠点の海外移転などの影響で、業績低迷に苦しんでいたところ、生き残りをかけて既存顧客の新たなニーズや新規顧客のニーズに応えた製品の開発に取り組む必要があった。

そこで開始したのが、コア・コンピタンスを活用した新事業の探索である。西川精機製作所のコア・コンピタンスとは、工作機械による金属並びに樹脂の切削・板金・溶接・組立加工等の技術である。長年培ってきたこれらの技術を活用して研究開発型企業として新規事業分野への進出をめざしている。

具体的には、事業継承を活用した医療創薬機器製造や次世代カーボンフリー時代に向けた超小型モビリティ製造、国内自給率向上に向けた農業振興支援機械の製造など、様々な分野での取組を開始した。

その中でも注力しているのが、日本製アーチェリー弓具の開発である。ヤマハの川上源一氏がアーチェリーの弓具の製造を行うように指示したのが、日本におけるアーチェリー製造の始まりと言われている。

かつては世界的に評価の高かった日本製のアーチェリー弓具も、今は製造している企業はない。「日本人の技術で、日本人をサポートし、世界での立ち位置を向上させたい」という川上氏の言葉に強く共鳴し、日本製のアーチェリー弓具を復活させたいとの想いが西川精機製作所のアーチェリー事業への参入のきっかけである。

アーチェリー事業の本格的着手に向けて、産官学連携体制を構築

一方で、零細企業として、これまでノウハウのない領域で質の高いアーチェリーの弓具をいきなり製造することは難しい。そこで西川精機製作所は、必要なノウハウを持つ組織と連携を深め、チーム日本として産官学連携体制を構築してきた。

具体的には、東京都や江戸川区に加え、以前国産アーチェリー製造に携わっていた方を技術顧問として招聘や東京藝術大学デザイン工学・電気通信大学流体力学・日本大学精密機械工学などの教授からの学術な支援、さらには、純日本製の材料とものづくり中小企業の技術力などを集結させて、日本製アーチェリーの製造に着手した。

よって、西川精機製作所の研究開発は、我流で行われているわけではなく、元々数十年間、アーチェリーの弓具の開発に携わった優秀な技術者による確かなノウハウに基づいて行われている。ただ、技術者は高齢であるためデジタルスキルがない。また、ノウハウは属人的であり、日本において消滅する可能性があった。

そこで、西川精機製作所は、デジタルの力を活用しながら、かつて質の高い弓具を開発していた日本ならではのノウハウを継承し、現代的なものづくりに活用していることも特徴的な取組である。

市場の大きい海外市場をまずターゲットとし、政府機関と連携して海外での販促を強化

販売先としては、まず海外市場を想定している。理由としては、既に国内市場はある程度成熟しており、実績の少ない西川精機製作所の商品を導入していくには、時間を要する。しかし、海外であれば元々の市場が大きいことに加え、以前の日本製アーチェリーを評価してくれていた方々への訴求も可能と考えたからである。

2020年には、SAKURAという初代製品をリリースすることができた。その際、ラスベガスの展示会にもサンプル出展を行ったところ、海外の人は日本製の復活を喜んでくれており、日本製品への需要を感じた。

近年は、研究開発も進み第2世代、第3世代の製品開発にも辿り着いた。JETROの支援も受けながら欧州への販促を強化している。その結果、ベルギーの大手販売代理店との取引が実現したり、台湾在住の日本人選手やフランスで活動している選手等が製品を利用してくれたり、確実に西川精機製作所の製品が国際的にも評価されるようになってきた。

今後売上拡大していくためには、現在利用してくれている選手や産学連携体制のパートナーと協働しながら製品の機能向上に努めることに加え、生産コストの低減も必要となる。生産コストを落とし、ある程度の量の生産ができるようにならなければ、事業として成り立たない。

製品の質には自信を抱きつつあるために、これをいかにビジネスとして成り立たせていくかが今度の課題となっている。更なるパートナーとの連携により、古き良き時代の日本製アーチェリー弓具のテイストに最先端機器と中小企業の技術力を組み合わせた日本製アーチェリーの復活に期待したい。

産金学官連携でMade in Japan 復活を!

◇担当者コメント

アーチェリー弓具の国産化の想いを抱いてから、各方面でいろいろな方のご協力・ご支援をいただき、2020年にリカーブボウの発売をすることができました。アーチェリー製作の技術承継を進めるに際し、大学等研究機関の先生方のご支援並びに助成金を活用させていただくことで、本年3月にはパラリンピック競技種目で使用されるコンパウンドボウを日本で初めて専用設計として開発することができました。改めまして、この場をお借りしまして、これまでにご指導・ご支援を賜りました皆様へお礼申し上げます。今後もアーチェリー弓具の製品化を進め、日本国内だけでなく海外に向けても提供してまいります。

株式会社西川精機製作所 代表取締役 西川喜久氏

#スポーツ用品 #アーチェリー #弓具 #リカーブボウ #コンパウンドボウ #国産化 #アメリカ #欧州 #台湾


※所属・肩書等は2023年2月の取材当時のものとなります

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