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RUN.EDGE:スポーツ向けの映像検索・分析サービスで海外展開

2023.09.13

世界中のクラブで活躍するコーチ・分析官を育成するMBP School of CoachesでFL-UXを利用する様子

RUN.EDGEはスポーツや教育をはじめとする様々な分野で映像分析プラットフォームの開発・提供を行う企業である。創業当初より特許も有するそのコア技術「映像シーン再生」について様々な分野での利用可能性を検討する中で、当技術がスポーツ分野における映像分析とマッチしていたことから、スポーツ分野に特化したプロダクトの開発に注力するようになった。

現在はスポーツ分析SaaS「PITCHBASE(ピッチベース)」と「FL-UX(フラックス)」の二つのアプリケーションを展開している。「PITCHBASE」は投球シーンの高速再生技術を搭載した野球映像の検索・分析向けアプリケーションで、日本(NPB)の9割の球団のほか、米国(MLB)及び韓国のプロリーグ10以上の球団で採用されている。

「FL-UX」はアプリ上での映像編集・分析・共有、メンバー間のコミュニケーションを可能とするアプリケーションである。サッカー、バスケ、ラグビー他、あらゆるチームスポーツに対応する競技横断型であり、プロとアマチュアの双方での展開を目指しているアプリケーションである。国内のみならずスペイン、ドイツ、フランス、UAE、メキシコ、コスタリカ、ブラジルなど国内外の180以上のトッププロ・アマチュアクラブで利用されている。

展開コンテンツスポーツ分野向け映像検索・分析サービス(スポーツテック)
展開先アメリカ、スペイン、ドイツ、フランス、UAE、メキシコ、コスタリカ、ブラジル

海外展開を当初から想定して、スポーツ分野のプロダクト開発と海外事業に取り組む

日本発のプロダクトで世界に挑みたいという強い思いを抱いていたこと、スポーツは国内外でルールが変わらないために海外展開が行いやすいことの二点が理由となり、RUN.EDGEは設立当初からグローバルマーケットへの進出を想定して、事業を展開し、実際に以下のように海外に進出した。

PITCHBASE

野球用サービスであるPITCHBASEは、市場規模が大きいアメリカでMLBへの導入に挑んだ。MLBの球団とのビジネスにおいて、ダイレクトマーケティングのようなアウトバウンドの手法では導入に繋がることはほとんどなかった。あくまで球団側からのアクションから商談を始めないと最終的な導入につながらないことを、多数のアプローチ経験を通じてRUN.EDGEは体得していた。

そこで、球団側のアクションを生むために、スコットランド人の従業員が侍の格好をして刀を振りながらサービス紹介をする動画を作成することで、球団の興味を引き、商談の機会に繋げた。商談の場では、デモ映像を投影することで、担当者の興味関心をつかみ、トライアル、本導入へとつながっていった。このようにして、現地でのパイロット事例を作り出した後はユーザーが口コミで他球団の関係者に紹介する形で徐々にMLBにおけるサービス展開の拡大に至った。

FL-UX

スポーツ映像編集・分析ツールであるFL-UXはスペインのバルセロナを拠点とするサッカーコーチングスクールである「MBP School of Coaches」へのトライアル導入が様々な国への導入へと繋がった。RUN.EDGEの出資元企業のパートナーに参画していた元ブラジル代表のサッカー選手、エジミウソン氏経由でMBPの紹介を受け、トライアル導入へ繋げた。

MBPには世界中からコーチが学びに来るが、そこで2020年からプロモーションとしてFL-UXが使われ、スクールの参加者が帰国後も、所属チームでそのFL-UXを活用するという流れを作り出した。MBPでは、これまでにプロから小学校の先生まで、幅広いサッカーのコーチ1,000名以上がFL-UXで分析を学んできた。

クラウドベースの映像分析を他に先駆けて可能にしたことに優位性

スポーツ分野での映像サービスはネットワーク環境がない部分で活用されることが多かったため、従来はオフラインのツールが一般的であった。そのため、各チームのアナリストがPCで自ら分析を実施し、その結果を共有するというプロセスを踏んでいた。しかし、RUN.EDGEは完全にクラウドベースでアプリケーションを構築しており、リアルタイムで共有・コミュニケーションを行い、コラボレーションを生み出すことができるという点が強みとなり、多くのユーザーに受け入れられた。

コアパーソンへのアプローチが海外展開における最大の困難

海外展開では海外ネットワークへのアプローチ、特にコアパーソンへのアプローチ方法が大きな課題であった。PITCHBASEのMLBへの導入では、スポーツ系ベンダーやコンサルタントを活用するだけでなく、現地の野球界関係者からの紹介も受け現地球団のコアパーソンにはアプローチできたが、最終的な導入には至らなかった。

アメリカのスポーツ界では契約社員、個人事業主が多く、特に事業担当は人材の流動性が高く、担当者にアプローチしても、交渉が進まないことが多かった。そのため、事業担当ではなく、競技に直接携わっているコアパーソンにアプローチし、その導入意欲を高め、トップダウンで導入を進めることが必要であった。

そういった背景もあり、PITCHBASEではキャッチーな動画を作成しマーケティングに活用することで、コアパーソンの直接なアプローチを試みた。スポーツ業界は一般的にネットワークが重要である。しかし、スポンサーシップ担当などの事業系担当者と繋がるだけではツール導入には繋がらない。指導者等、直接競技に関わっている者にアプローチすることが重要だが、難易度が高い。

スポーツチームと企業へのアプローチにより、FL-UXの海外展開を狙う

FL-UXの海外展開では、プロのトップリーグ以外へのアプローチが必要となる。市場にはトップリーグに特化した競合サービスが多数存在しているため、FL-UXはメインのターゲットをトップリーグの下位リーグやユース世代に設定し、初期アプローチを通じて、パイロット事例を創出し、そこからマーケティングをしていく方針を取っている。

また、あわせてBtoBの事業も進めている。具体的には、高校生アスリートを大学にスカウトさせるドイツのスポーツエージェントと連携している。スポーツエージェントはアスリートを大学向けにアピールする必要がある。そこで、RUN.EDGEは、エージェントがアスリートへリモートコーチングを行う際にFL-UXを使用させ、映像ベースでのコミュニケーションを可能にしたことに加え、ヨーロッパの様々な地域に散らばる選手達からリモートでの映像収集を可能とし、エージェントが世界各国のコーチや大学に選手をアピールするための材料集めをサポートした。

今後は、サッカーリーグやユース世代のチーム向けのサービス導入とスポーツエージェントのような一般企業への導入の双方を広げることで、FL-UXのさらなる国際展開を目指す。

スポーツありきの企業ではないからこそ、フラットな目線で顧客の課題を解決

◇担当者コメント

RUN.EDGEはスポーツ事業に取り組むことを前提として設立された企業ではない。だからこそ、テクノロジーの目線でフラットに顧客の抱える課題を発見し、その解決に必要となる機能を作り出すことができる。最新のテクノロジーを活用した独自なオペレーションを提案するからこそ、あらゆるアスリートに寄り添うプロダクトを実現することができる。私達は、良いプロダクトを作れば、世界でも必ず売れるという想いを持っている。

RUN.EDGE株式会社

代表取締役社長 小口淳氏

#スポーツテック #野球 #アメリカ #MLB #サッカー #スペイン #ドイツ


※所属・肩書等は2023年3月の取材当時のものとなります

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