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日台野球交流を深めた3年間の軌跡(パシフィックリーグマーケティング 髙木隆)

2025.12.11

富邦球団×PLM共同企画 野球教室後の記念撮影 ©PLM

2023年より、パシフィックリーグマーケティング(以下、PLM)は、台湾におけるパ・リーグ6球団の現地プロモーションに注力している。3年目となる今年は、2年連続で台湾プロ野球の富邦ガーディアンズ(以下、富邦球団)と共同で野球教室、ファンミーティング、台湾限定パ・リーググッズの販売を実施した。本稿では、これらの実施内容、3年間のプロモーション総括、そして今後の展望についてお伝えする。

台湾高校野球の強豪チーム向け野球教室

昨年の小学生向けに続き、今年も台湾の野球文化の醸成と地域社会への貢献を目的に、強豪高校である新北市私立穀保高級家事商業職業學校を対象に野球教室を実施した。現地でも知名度の高いオリックス・バファローズOBの能見篤史氏が現地で直接指導を行った。

能見氏は各選手の投球フォームを細かくチェックし、すぐにそれぞれの課題を指摘、通訳やボディランゲージを交えながら、一人ひとりに丁寧なアドバイスを送った。

高校生に指導を行う能見氏 ©PLM

野球教室の結びとして、能見氏は「皆さん、能力は非常に高いです。ただ、その能力を生かすも殺すも自分次第。野球はうまくいかないことの方が多い。そこに対してどう向き合い、克服できるかが大切です。それを乗り越えなければ、違う景色は見えてこないと思います。ここから何人かはプロになると思うので、非常に楽しみです」と、熱い激励のメッセージを送った。

高校生からの質問に回答する能見氏 ©PLM

台湾初!“リアル”ファンミーティングを開催

初の試みとして、台北市の著名な商業施設である三創生活園區にて能見氏をゲストに招き、パ・リーグ6球団の“リアル”ファンミーティングを開催した。2025年のパーソル クライマックスシリーズ パに進出するパ・リーグ3球団の予想、パ・リーグ6球団の今後の注目選手紹介、能見氏へのQ&Aコーナーなど盛り沢山の内容で進行した。イベントは11時から約1時間半にわたり開催され、会場には約80人の現地のファンが集まり、大盛況のうちに終了した。

熱心なファンならではの鋭いコメントが寄せられる中、「(オリックス時代の)山本由伸投手や宮城大弥投手とのやり取りはまるで親子のようでした」という発言が出ると、能見氏は思わず「よう見てんな~」と反応。「両投手とは本当に良い関係でやっていたので、僕も自然と表情を出すようになりました」と当時を振り返った。

“リアル”ファンミーティングに参加する台湾のファン ©PLM

台湾限定パ・リーググッズの販売

“リアル”ファンミーティングに続き、今年は台湾市場においてマイルストーンと呼ぶべき新たな試みを行った。台湾のアパレル企業とコラボレーションし、台湾限定のパ・リーグ球団グッズを販売した。北海道日本ハムファイターズ、埼玉西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズの3球団の台湾限定ユニフォームやキャップ、Tシャツなどを展開した。この取組の背景には、放映・配信権の価値の更なる向上に現地でのオフライン接点の多角化が必須であるという考えがある。放映・配信や単発イベントへの露出のみに頼るのではなく、「現地ファンの日常」にパ・リーグ6球団のコンテンツが常に存在することが、次のステージに進むための重要な鍵になると捉えている。

台湾限定グッズを手に取るファン ©PLM

3年間のプロモーション総括:オフライン接点の多角化

2023年以前は、台湾のファンとのタッチポイント(顧客接点)が試合のライブ放送・配信のみであったことを反省し、この3年間は放送・配信以外でのファンとのタッチポイントを複数作り出すことや、現地のステークホルダーとの協業に重点的に取り組んだ。

具体的には、台湾人選手へのインタビューや、クライマックスシリーズでのパブリックビューイング、台湾プロ野球3球団とのイベントを実施し、パ・リーグ6球団にちなんだクイズなどをとおして各球団及び選手の魅力を紹介した。また、台湾メディアが制作するYouTube番組にパ・リーグ6球団の日本人OB選手や現役台湾人選手を起用し、様々なチャネルで潜在的なファン層へのリーチも試みた。

これらの施策により、パ・リーグ6球団及び選手への興味・関心は台湾で確実に向上しつつある。実際に、KPIである視聴率は昨年比で約2倍に成長した。最近実施した調査によると、直近3年間以内にパ・リーグ6球団のファンになった人が54%を占めており、一定の成果を実感している。ただ、「現地ファンの日常」にパ・リーグ6球団のコンテンツが常に存在する状況までは創りきれていないので、直近の取組を地道に継続していくことが一番の課題だ。

また、近年パ・リーグ各球団も独自に海外球団との交流試合を積極的に実施しており、それらの動きにも連動し、成果を最大化できるように努めていく。

今後のPLM海外事業の展望:交流の「架け橋」へ

今後もPLMのミッションである「プロ野球の新しいファンを増やすこと」を海外事業領域で具現化していく。戦略上最も重要な台湾においては、台湾プロ野球球団、マスメディア、スポーツアパレル企業と更に協業を進める。前述の施策を軸にオフライン接点の多角化を進め、パ・リーグ6球団のファンベースを中長期的に醸成していくことを目標とする。

さらに、PLMの活動を通じたビジネスやアカデミックな分野での日台の相互交流も推進していきたいと考えている。今年は初めて、日本企業が運営するサービスの現地プロモーションを台湾プロ野球球団とともにサポートした。また、台湾の大型プロジェクトである「青年百億海外圓夢基金計畫」によって派遣された台湾人学生インターンを日本で受け入れ、座学だけでなくスポーツ業界の実務を体験する機会をPLMとして提供した。今後も現地でパ・リーグ6球団や選手が更に定着すべく事業を推進していく。

◇髙木 隆(たかぎ・りゅう)

パシフィックリーグマーケティング株式会社 メディアライツ事業部 副部長

米国の大学・大学院を卒業後、4年間米国の監査法人で財務監査業務を担当。帰国後はコンサルティング会社で企業価値評価業務を担当。その後、渡米前からの夢であったスポーツビジネスに挑戦すべく、パシフィックリーグマーケティング株式会社に入社。現在は主に国内・海外放映権の販売及びプロモーション、人材事業のキャリアアドバイザーを担当。

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