Jリーグは、クラブ運営・選手育成・集客方法・スクール運営等リーグが持つ強みを生かして、東南アジアを中心に海外リーグとの提携等によるコネクションを構築。リーグ単位で連携することで、テーマごとに関心を持つクラブやスポンサー同士が繋がるといったマッチングの役割も果たしている。クラブが海外で価値を発揮することで、スポンサーシップの呼び込みにも繋がり、クラブを“ハブ”としてスポンサー企業が海外進出するケースも出てきている。
展開コンテンツ | クラブ、スポンサーの海外進出支援(リーグ・クラブ運営) |
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展開先 | タイ、ベトナム、インドネシア等 |
アジア展開の必要性
リーマンショック以降、国内市場以外の新たな収入の柱を作る必要性を感じていた中で、東南アジアにおけるサッカーリーグの盛り上がり、経済の勢い、人口増加等の社会情勢も踏まえ、何か取り組めることがないかを検討し始めたことがアジア戦略開始のきっかけであった。
2011年4月に新規事業開発プロジェクトという名前でプロジェクトを発足し、タイ、インドネシア、ベトナム、カンボジア等アセアン各国にヒアリングを実施するなど調査を進め、2012年1月にアジア戦略室を立ち上げた。
これまで、2012年にタイプレミアリーグとのパートナーシップ契約を締結したのを皮切りに、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、マレーシア、シンガポールなど各国リーグとリーグ間提携を進め、関係向上を図っている。
Jリーグの持つ強みを生かしてアジア現地でのキーパーソンと関係構築
アジアでの現地調査を進める中で、アジアのサッカー関係者はJリーグのクラブ運営(法人化)、ガバナンス、選手育成、集客方法、スクール運営等のノウハウについて学びたい、というニーズがあることが確認された。現地のサッカークラブ運営に関与するキーパーソン(特に東南アジアではサッカークラブと現地財閥、政界とのつながりが強い)に対して、先方の求めるノウハウを提供することで関係を構築していった。
リーグとしてはそのネットワークを、クラブ並びにスポンサー企業、地方自治体に還元し、地域と世界が直接つながる「クール・ローカル」を実現することを目指している。なお、関係構築に当たってはJリーグおよびサッカーがハブとなっていることも有り、通常のビジネス商談では築くことのできないフランクな関係構築を実現することができ、これもJリーグならではの強みとなっている。
リーグ同士の提携をきっかけとしたクラブおよびスポンサー企業の海外展開
Jリーグがアジアのリーグと提携することで、テーマごとに興味を持つ各リーグのクラブ同士がつながるなど、マッチングの役割も果たしている。例えば、2012年にタイリーグと連携した際に、現地リーグ、クラブとの提携に関心を持つJリーグクラブを募集し、一部クラブが現地に赴き、タイリーグ・クラブと面会する機会を設けた。また、東南アジアの各国リーグのクラブを日本に招待して、各クラブの現地見学を行う機会も創出した。
国際展開による効果が出現しているクラブとして、北海道コンサドーレ札幌が挙げられる。北海道という土地柄もあり、アジアにおける放映やクラブのPRポテンシャルに注目していた中で、タイ選手の獲得を通じて、タイへの進出を検討する日系企業から、日本だけでなく、タイでのクラブの価値を見込んで新たなスポンサーシップ契約締結に至るケースも確認されている。
その他にもセレッソ大阪のスポンサー企業のヤンマーも、クラブをハブとして東南アジア進出の動きが確認されている。これまでは日本でのクラブの価値に協賛してもらっていたところ、新たなアジアでの価値に対してスポンサーシップを呼び込み、クラブの収益向上へと繋がっていくことも期待されている。
海外での放映権収入の拡大
Jリーグとしての国際展開の直接効果は、テレビ等の放映権収入向上が柱となっている。アジア圏出身選手のJリーグ加入等によりアジアエリアでのマーケット価値を上げていくことで、海外での放映権料が上昇するサイクルが生み出されている。
現在は海外での放映権料収益が2012年と比較して約10倍に拡大している。特にタイ、香港、中国ではJリーグのファンも増えており、放映権収益が大きくなっている。一方、ベトナムではまだまだ有料放送にお金を払う文化が乏しい等、放映権に関する土壌も国ごとに異なるため、マーケットごとに区切って検討し、キーとなる国・地域については特に注力して関係性を構築している。
現地ニーズ把握およびグローバルに俯瞰した自らの強みの認識が重要
◇担当者コメント
タイ、インドネシア、ベトナム、カンボジア等アセアン各国にヒアリングを実施するなど、調査を進める中で、Jリーグのクラブ運営や選手育成に関するニーズを把握するとともに、Jリーグの持つ強みを再認識し、そのノウハウを現地に共有しながらネットワークを構築しました。
Jリーグと他国のリーグ同士が連携し、テーマごとに興味を持つクラブチーム同士をマッチングする役割を果たすことによって、共に成長する(共創共栄)という目線で進めています。グローバルに俯瞰してみたときに自分たちが戦える強みを認識することが重要で、上から目線にならずに、先方に対して共感を得ることができる投げかけをしていくことが求められます。
公益社団法人日本プロサッカーリーグ国際室 山下修作氏(左端) 株式会社Jリーグ グローバルカンパニー部門 大矢丈之氏(左2番目)、小山恵氏(右端)
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※所属・肩書等は2020年9月の取材当時のものです