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スポーツテックで世界とつながる―JSPIN SEMINAR 2025開催レポート(JSPIN事務局)

2026.03.05

2025年12月3日、東京において「JSPIN SEMINAR 2025」を開催しました。本セミナーは、スポーツ産業の国際展開に関心を有する国内企業・団体を対象に、特定のテーマにおける国際的なトレンドや現状の課題、取組などについて共有するとともに、参加者間のネットワーキング形成を促進することを目的として実施した。

今年のテーマは「スポーツテック×海外展開」。

世界で急拡大するスポーツテック市場の全体像を押さえつつ、オセアニア(オーストラリア)における産官学それぞれの立場からの具体的な事例、日本企業の取組などを取り上げました。会場では、ネットワーキングの時間を含めて登壇者と参加者が情報交換等を行い、新たな連携のきっかけとなる交流が生まれた。

以下、当日の様子について事務局より紹介する。

1.世界のスポーツテックエコシステムから見た日本の課題

    小倉大地雄氏(Venture Café Tokyo Program Partner)が世界のスポーツテックエコシステムに関する解説を行い、本セミナーの口火を切った。2020年から2024年のスポーツテック関連の累計投資額は約580億ドルであり、2024年は米国が世界投資の56%を占め、北米主導の成長が続く一方で、インドや中国、サウジアラビア、オーストラリアなどアジア太平洋地域の台頭も顕著である点が強調された(※)。さらに、オーストラリアや日本の政策的な動向についても触れ、国際的な競争環境の変化を示した。
    ※データ出典:sportstechx.com

    また、GAFAなどの大手テック企業によるスポーツ領域への参入や、M&Aによるプラットフォーマー化、リーグやチーム、アスリートによるオープンイノベーションの加速が周辺産業を巻き込んだエコシステムを形成している点についても言及した。

    さらに、日本における資金調達の難しさがスタートアップの新陳代謝を阻む課題を抱えていることを指摘。国内ハブの強化とともに、海外ハブとの常時接続による投資機能やPoC(概念実証)機会の拡充が不可欠であると結論付けた。

    小倉氏が本セミナーのトップバッターとして世界のスポーツテックのエコシステムについて解説

    2.オーストラリアのスポーツエコシステムにおける産官学それぞれの役割と日本との連携可能性

    第二部では、オーストラリアに焦点を充て、産官学それぞれの立場から同国のスポーツエコシステムや日本との協働の可能性について紹介がなされた。

    冒頭、クリスティーナ・メリノ氏(JASHIE CEO & Founder)は、日豪間のスポーツ・イノベーション・エコシステムをつなぎ、成長させ、持続させる取組を推進しており、スポーツマネジメント、ヘルスケア、ハイパフォーマンスをターゲット領域としていることを紹介。ブリスベン2032大会を見据え、2026年から2029年にかけてのプログラム拡充やパイロット実施、レガシー形成に向けたロードマップを説明した。

    半田晋氏(大和証券オーストラリア現地法人 取締役社長)は、産官学連携による「価値共創」モデルを説明し、日本の技術力とオーストラリアの実装力が相互補完的である点を指摘した。両国が協働することにより、グローバル市場での競争力を高める可能性があることを強調した。

    市井礼奈氏(ロイヤルメルボルン工科大学 講師)は、大学を中心とした研究ネットワークの役割について言及し、スポーツ科学やデータサイエンスを活用した共同研究及び人材交流の機会を示した。具体例として、F1オーストラリアGPでの技術展示や、クリケットチームとの連携を紹介し、実証実験としての場として最適な環境であることを示した。

    最後に、猪岡メリッサ氏(クイーンズランド州政府駐日事務所 駐日代表)は、州としてのスポーツテック戦略を紹介した。ブリスベン2032大会やラグビーワールドカップ2027などの国際大会を追い風に、AIやロボティクス、VR/ARといった技術基盤の整備や大学・産業界との連携強化、Advance Queenslandに代表される州政府主導の支援スキームなどの取組が説明された。また、VALD Performanceをはじめとする州発の企業が世界のトップリーグなどに技術提供している事例も共有された。こうした事例は、同州がスタートアップの成長と国際展開を支える環境整備に取り組んでいることを示している。また、支援策や連携の取組を通じて、同州が海外企業にとって技術開発や検証を進めやすい環境を備えている点を強調した。

    オーストラリアから登壇するメリノ氏、市井氏、半田氏(写真左)と会場から登壇する猪岡氏(写真右)

    3.パネルディスカッション

    パネルディスカッションには、セッション1及びセッション2の登壇者に加え、中嶋弘貴氏(ミズノ株式会社 総合企画室担当課長)と、ファシリテーターとして竹嶋大助氏(株式会社BOTTOM UP CEO/Kitman Labs Ltd. アジアパシフィック事業戦略部長/JSPINアドバイザー)が参加し、日豪のスポーツテック連携に関する現状や展望が議論された。参加者の疑問やニーズにも寄り添う形で議論が展開された。

    日本は技術力や精緻な仕組みづくりに強みを持ちつつ、英語でのピッチや国際的なコミュニケーションに課題があり、海外の投資家・リーグ・大学との接点が生まれにくい一方、オーストラリアは意思決定が早く、大学や州政府が産学連携のハブとして機能し、実証から事業化までのスピードが速い点が特徴であることが示された。

    また、日本企業が豪州市場に参入する際には、スポーツ文化やトレーニング観の違いを踏まえたローカライズが不可欠であることが共有された。あわせて、産学連携や人材交流、D&Iへの取組といった協働テーマが広がっているほか、スポーツテックの成果をバイオテックやヘルステックといった隣接分野へ展開する可能性にも言及があった。

    総じて、両国は異なる強みを持つ「補完関係」にあり、ブリスベン2032大会を見据えた技術協力、D&I領域での新規事業、大学や州政府を介した共同研究・実証など、多様な連携可能性が存在するとの認識が共有された。

    中嶋氏とファシリテーターとして竹嶋氏(JSPINアドバイザー)が加わり日豪のスポーツテック市場について議論を交わした

    4.今後の展望

    本セミナー全体をとおして、日本のスポーツテックを国際展開する上で、オーストラリアとの連携が重要な契機となり得ることが共有された。特に、豪州のスピード感ある実証環境や産学官ネットワークを生かし、越境型PoCや投資家との接続を広げる意義が言及された。今後は、こうした日豪間の実証や人材交流の取組を関係者間でどのように育てていくかが課題となる。

    ブリスベン2032大会を視野に入れると、両国の技術・制度・人材を結びつきの重要性はより一層高まる。国内ではスタートアップ支援やデータ環境の強化を進めつつ、国際的には豪州を含む近隣地域との共同研究や実装の機会を拡大させ、持続的な共創の可能性を探っていくことが期待される。

    <以下、結び>

    本セミナーにおける情報提供や議論をとおして、日豪の連携によるスポーツテックの海外展開の可能性がより一層広がりつつあることを実感した。JSPINでは、国内外の関係者との接続点を創出して連携を深め、日本のスポーツ産業の国際展開に資する取組を引き続き進めていく。

    ◇JSPIN事務局

    JSPIN事務局のメンバーが、日本のスポーツ産業のさらなる国際展開を支援する活動等をご紹介します。

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